駐輪場の段差はどうする?段差解消に必要な切り下げ工事の流れ
駐輪場の経営を行う際には、適した土地を選ぶことが重要です。特に駅や商店街に近い場所は利用者が多く、需要が高いため適しています。また、狭い土地や変形地でも駐輪場として活用できるため、建物や駐車場に向かない土地も有効活用が可能です。
一方、道路との高低差がある土地は駐輪場に向かず、段差解消には工事が必要です。ただし、無許可でブロックや鉄板を設置して段差を解消する行為は、道路法で禁止されており、罰則や事故のリスクが伴います。段差を解消する際は、切り下げ工事を行うことが推奨され、事前に申請手続きが必要です。
目次
駐輪場に適した土地の特徴
近年、土地活用などで駐輪場を経営する方が増えています。駐輪場を経営するにあたって、土地選びは非常に重要です。駐輪場に適した土地には、いくつかの特徴があります。
◇駅や商店街から近い土地
大前提として、駅周辺の駐輪場は通勤・通学で利用する方が多いため、非常に需要が高いです。また、商店街など自転車の利用者が多い場所も、駐輪場は重宝されます。そのため、駅周辺や商店街周辺の土地は、駐輪場をつくる上で最も適しているといえるでしょう。
◇狭い土地や変形地
狭い土地や形状がいびつな土地も駐輪場として活用できます。狭い土地・いびつな形状の土地として挙げられるのは、具体的には、三角地・傾斜地・台形地などです。このような形状の土地は、建物や駐車場ではスペースが狭いため、活用に向きません。しかし、自転車であれば、車ほどスペースもとらないため、上記のような狭小地や変形地も活用できます。
◇道路との段差がない土地
道路との段差がある土地は、安く購入できますが自転車の出入りがしづらいため、駐輪場にはあまり向きません。段差のある土地を駐輪場にしようとすると追加工事が必要となるケースがあり、工事費用が発生するため、できるだけ段差のない土地を選ぶのが望ましいです。
道路の段差を自己流で解消すると処罰の対象に
高低差のある土地の高低差をなくすには、工事が必要になってきますが、工事費用も決して安いものではありません。そのため、自己流で高低差を解消しようとする方もいますが処罰の対象となるケースがあります。
◇段差の解消にブロックや鉄板の設置は禁止
自己流でよくあるのが、段差をなくすために乗り入れブロックを設置する方法です。たまに道路などで、ブロックや鉄板などで段差解消を行っているのを見たことがあるかもしれません。しかし、ブロックなどを道路に設置する方法は、道路法第43条で禁止されている行為です。
歩行者・自転車・バイクの通行の妨げになるだけでなく、大雨などの際にブロックや鉄板などが流されて事故につながるリスクもあります。さらに、ブロックなどが雨水の排水を妨げてしまい、道路が冠水するリスクもあるため非常に危険です。
過去には、大阪府堺市でミニバイクを運転していた大学生が、車道と歩道の間にある段差解消ブロックに接触して転倒し、車にはねられて亡くなる事故が発生しています。万が一、ブロックなどが原因で事故が発生した場合は、道路法だけでなく民法でも責任が問われるケースがあるため、注意が必要です。
◇道路にブロックや鉄板を設置した際のペナルティ
ブロックなどを道路上に無許可で設置した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
段差による事故を起こさないためには、それ以外の方法で、なにかしらの対処が必要です。道路法第24条の申請手続きを行うと、切り下げ工事ができる場合があります。ただし、工事費用は自己負担です。
切り下げ工事でお年寄りや子どもが安心して暮らせる街に
道路は、車道と歩道の間を縁石で区切っているのが一般的です。この段差をなくす工事を切り下げ工事といい、メリットには次の2つがあります。
◇利用者がスムーズに自転車を出し入れできる
切り下げ工事で段差をなくすことで、自転車、バイクの出入りがしやすくなる点が最大のメリットです。段差があるとガクンとなり、自転車やバイクの場合は転倒する恐れがあります。また、タイヤが消耗したり、自転車やバイクのボディに傷が付いたりする可能性もあるため、高低差のある土地に駐輪場をつくる場合は、切り下げ工事を行っておくと安心です。
◇高齢者や子どもが転倒するリスクを軽減できる
駐輪場は、高齢者や子ども連れの利用者も多く、段差があると転倒してしまう可能性があります。駐輪場前の道路の段差が原因で事故が起こりケガをした場合、駐輪場の所有者・管理者が損害賠償責任を負わなければならないケースがあります。
「駐輪場内での事故について一切責任を負わない」と公表していても、損害賠償責任を問われるケースもあり、被害者ともめるケースも少なくありません。こうした転倒による事故・ケガを防止するためにも、切り下げ工事を行ってしっかり駐輪場前を整備しておくことが重要です。
切り下げ工事には申請が必要!工事のおおまかな流れ
切り下げ工事を行うには、いくつか手順を踏まなければなりません。ここからは、切り下げ工事の申請や施工の流れをご紹介します。
◇歩道切り下げの承認申請を行う
切り下げ工事を行う際は、最初に切り下げ工事申請が必要です。担当出張所へ行き、詳細事項を確認後に申請書を提出、審査が行われます。
道路の切り下げ工事は、各自治体によっていくつか基準が設けられているため、基準を満たしていない場合は工事の許可が下りません。
国土交通省 関東地方相武国道事務所の「歩道切下げ工事の承認基準」によると、次の基準をクリアする必要があります。
・民地側に車庫・その他自動車などを保管する場所がある
・切り下げ箇所は1施設につき1箇所
・切り下げは原則歩道と直角
・隣接出入り口との間隔が2m以上ある
・切り下げ幅は必要最小限の幅になっている
切り下げ工事は、原則1施設に1箇所だけ承認が認められますが、車などの出入りが頻繁な場所や道路管理者からの許可があれば2箇所まで切り下げ工事が可能です。2箇所公示する場合は、出入口の間隔を5.6m以上離さなければならないため、注意しましょう。
また、次のようなケースは切り下げ工事ができません。
・バスの停留所・路面電車の停留場所
・地下道・地下鉄の出入り口や横断歩道の昇降口から5m以内
・横断歩道とその前後から5m以内
・トンネル等の前後各50m以内
・交差点やその測端または道路の曲がり角から5m以内
・バス停留帯
・橋
・防護柵・車止めが設置されている
・信号機・道路照明街灯を移動させる必要がある場所
ただし、上記のいずれかに当てはまる場所でも所有者や道路管理者が許可した場合は、承認される可能性もあります。上記の場所以外にも切り下げ工事ができない場合があるため、担当者に問い合わせしてみるのがおすすめです。
引用:歩道切り下げ等道路工事
◇切り下げ工事の流れ
審査が通ったら出張所で発行された申請書を持って所轄の警察署へ行き、道路使用許可申請書を提出し、許可を受けたら申請は完了です。
工事開始前には工事着手届、工事完了後は工事完了届を担当出張所に提出しなければなりません。道路管理者との打ち合わせは、申請者が全て行わなければならないため、最初から専門業者への依頼がおすすめです。
申請が通ったら、いよいよ工事に入ります。切り下げ工事は最短で1日、長くても3日ほどです。工事は、対象エリアのアスファルトやコンクリートを剥がす→高い縁石を剥がす→新しい低い縁石を配置する→対象エリアをアスファルトやコンクリートで元に戻す順番で進めます。
切り下げ工事を行う場所の道路下に何も埋まっていない場合は、縁石を入れ替えるだけのため、1日ほどで完了します。しかし、道路下に水道管など障害物が埋まっていたり、補強が必要だったりする場合は数日かかるため、注意が必要です。
歩道の切り下げ工事には、大体約30〜100万円ほどかかります。また、特殊なブロックや自然石でつくられている歩道の場合、工事費が高くなるケースが多いです。
駐輪場経営を成功させるためには、適切な土地選びが重要です。特に駅や商店街に近い土地は、通勤・通学や買い物などで自転車を利用する人が多いため、駐輪場の需要が高まります。
一方で、駐輪場として活用できる土地は、広さや形状に制約がある場合でも問題ありません。たとえば、狭い土地や形状がいびつな土地、三角地や傾斜地、台形地なども、建物や駐車場には不向きでも、駐輪場としては十分に活用可能です。
しかしながら、駐輪場に適さない土地も存在します。たとえば、道路との高低差がある土地は、自転車の出入りが困難で、利用者にとって使いづらいものになります。このような土地を駐輪場として活用するためには、段差を解消する工事が必要になりますが、工事には費用がかかり、無許可での対策は法的に問題となります。
よく見かける自己流での段差解消、たとえばブロックや鉄板を設置する行為は、道路法で禁止されており、罰則を受ける可能性があります。さらに、ブロックや鉄板は雨水の排水を妨げることがあり、冠水や事故の原因にもなるため非常に危険です。
段差を解消するための適切な方法としては、「切り下げ工事」があります。切り下げ工事を行うことで、駐輪場の利用者がスムーズに自転車を出し入れできるようになります。また、駐輪場を利用する高齢者や子ども連れの家族にとっても、安心して利用できる環境が整います。
切り下げ工事を行うには、まず申請手続きを経る必要があります。各自治体によって基準が設けられており、基準を満たした場合のみ工事が許可されます。申請後は、道路管理者や警察との打ち合わせを経て、工事の準備を進めます。工事期間は、1日から3日ほどです。
適切な土地選びと工事を行うことで、利用者にとって使いやすく安全な駐輪場を提供することができ、経営の安定化にも繋がります。